世界音痴

2005年4月1日 読書
ISBN:4093873739 単行本 穂村 弘 小学館 2002/03 ¥1,365

歌人・穂村弘のエッセイ集。
この人のことは全く知らないままに読み始めたのだけど、受けた印象は

「ドラえもんに会えなかったのび太」

会えないうちに大人になってしまったのび太。
のび太はドラえもんと会えたことによって世界とのつながりを明確にし、道案内をされ、溶け込んでいくことを知る。
だけど、ドラえもんに会えなかったその他ののび太は・・・?
どうやって世界と繋がっていくのだろう・・・?

エッセイ集ってのは結構な割合で、どこかに著者の自慢が散らばっている。
おしゃれな生活をしてるとか。
時代の先端をいっているとか。
考えが独創的だとか。
「自分だけ」っていう個性の主張とか。
それはどんなに綿密に計算して隠そうとしても、そこはかとなく滲み出てくるもので。
たとえ笑い話で読者を楽しませようとしたものでさえ、しばしばありえる。

だけどこの人の本からはそれが感じられない。
ただ「ネクラな自分」がいるだけ。
淡々と「ネクラな自分」を語るだけ。
なのに、
ただそれだけなのに、自分の心の中にちくちくと刺してくる。
自分が自覚しなかった(したくなかった?)「ネクラな私」をも浮上させる。
隠して蓋をして、閉じ込めて、まるで何事もないように振舞う私(あなた)の中にも
そういう感情をもっているだろう?って思い起こさせる。

お店に入った瞬間、気に入った服をぱっと選んでしまえる人に、
体育祭のゼッケンをつけてあげたいと思う女子がいっぱいいるのに自分でさっとつけてしまったクラスメイトに、
ただただ「敵わない」と実感してる。
そういう人にはなれないとも。
小心者で気が弱い。なのに「ネクラな自分」にどこか潔い。
その矛盾がちょっと面白い。

「ネアカな人」ならこの本は理解できないだろう。それでいいとおもう。

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